大航海物語 | 大航海時代 と 新世界の産物(食料)(2)
アイルランドのジャガイモ飢饉 Potato Famine, 1847 |
参考資料 |
EIRE アイルランド地図 アイルランド1922発行 |
ESPANA スペインに移入されたジャガイモ スペイン 1989 発行 |
アイルランド大飢饉 (Great Potato Famine) |
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移民として旅立つ人々(Coffin Ship) Passengers waiting to board Emigrant Ship |
子供を埋葬する家族 Family group attending dying child |
飢えに苦しむ人へのスープを準備する人々 Irish Society of Friends Soup Kitchen |
アイルランド大飢饉150年記念 アイルランド 1997/5/14 発行 |
ジャガイモ飢饉 (じゃがいもききん) Potato Famine (Great Famine) アイルランドにも新大陸(南米)からジャガイモが伝わってきていました。そして、アイルランドでは隣の宗主国であるイギリスのように製造業が発展せず、国民の大半は農業に依存していました。さらに、アイルランドの農民は全ての兄弟が土地を分割相続できる仕組みになっていました。そのため農地の細分化が進みました。また、以前は主に麦を栽培していた小作農家達は、地主に納めなくてもよい自分らの小さな庭地で、新大陸渡来の非常に生産性の高いジャガイモの栽培を始めました。このことからジャガイモが貧農の唯一の食料となっていき、飢饉直前には人口の3割がジャガイモに生存を依存する状態になっていました。 1845年から1849年の4年間にわたってヨーロッパ全域でジャガイモの疫病が大発生し、ジャガイモが壊滅的な被害を受けました。この不作を飢饉に変えたのはその後の政策にあるといわれています。他のヨーロッパでは地元の貴族や地主が救済活動を行いました。ところが、1801年のグレートブリテン及びアイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Ireland)の成立以降、アイルランド島は全土がロンドンの連合王国政府及び連合王国議会(Parliament of the United Kingdom of Great Britain and Ireland)による直接的な統治下に置かれていたので、アイルランドの貴族や地主のほとんどがイギリスに住んでいて、自らの地代収入を心配して、アイルランドの食料輸出禁止に反対するなど、人々が餓死しているにも関わらず食料がアイルランドから輸出されるという状態が続きました。隣国で宗主国のイギリスの政府も緊急に救済食料を他から調達し、飢え苦しんでいる者に直接食料を配布することを予算の関係などからためらうだけでなく、調達した食料を(安値で)売るなどの間接的救済策に重点をおきました。さらに政府からの直接の救済措置を受けられるのは土地を持たない者に制限したため、小作農が救済措置を受けるために僅かな農地と家を二束三文で売り払う結果となり、これが食糧生産基盤に決定的な打撃を与え飢餓を長引かせることになりました。最終的には人口の最低2割が餓死および病死。さらに10%〜20%が国外脱出。またこれにより婚姻や出産が激減し、最終的には国の総人口が最盛期の半分に激減しました。 10年でほぼ150万人が亡くなったと考えられています。現代の歴史家と統計学者は、病気と飢餓のせいで80万人から100万人が亡くなったと言っています。加えて、100万人以上のアイルランド人がイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどに移民し、その後10年でさらに100万人が移住しました。アイルランドは19世紀の人口に比べて20世紀の人口が減少している唯一の西欧の国です。近年の経済成長などもあり、最近では増加傾向ですが、2007年現在、アイルランド共和国と北アイルランドを合わせた全島の人口は未だに約600万人と、現在に至るも大飢饉以前の800〜900万人という数字には及んでいません。アイルランド語などの文化が壊滅的な打撃を受けほとんど消滅するなど、アイルランドにおいては歴史を飢餓前と飢餓後に分けるほど決定的な影響を与えたため「大飢饉」(Great Famine)と呼ばれています。飢饉の際のイングランドの無策はアイルランドのイングランドへの不信感を増幅させ、宗教政策ともあいまって独立運動のきっかけとなりました。 ジャガイモは通常前年の塊茎を植えるという無性生殖による栽培法を用いますが、ヨーロッパでは収量の多い品種に偏って栽培されており、遺伝的多様性がほとんどなかったので、菌の感染に耐え得るジャガイモがなく、菌の感染がこれまでないほど広がりました。ジャガイモが主食作物であった原産地のアンデス地方では、ひとつの畑にいくつもの品種を混ぜて栽培する習慣が伝統的に存在し、これが特定の病原菌(レース:Race)の蔓延による飢饉を防いでいました。 ・こちらで、ジャガイモをお楽しみください。 参考HP:〜 ・アイルランドの地図 ・上記はこちらの文献などを参照させてもらいました。 13/9/25、令和 R.2/2/23 (2020) |